― 新人教育を「教える人任せ」にしない5ステップ
「何を教えればいいのか」 「どこまでできれば合格なのか」を、 院長や先輩スタッフの感覚だけに頼っていませんか? スキルマップを使えば、新人が今どこまで成長しているのか、 次に何を教えればよいのかを医院全体で共有できるようになります。
にこまる院長
斎藤さん
歯科医院の新人教育では、 「一度教えたから、もうできるはず」 「Aさんは合格と言ったけれど、Bさんはまだ早いと言う」 といったことが起こりがちです。
これは、新人の能力だけの問題ではありません。
医院の中で「できる」の基準が共有されていないこと が、大きな原因の一つです。
この記事では、歯科医院で実際に使えるスキルマップを、 5つのステップで作っていきます。
- 歯科医院でスキルマップを作る目的
- 新人教育に必要な項目の洗い出し方
- 「できる・できない」の合格基準の決め方
- 4段階で習熟度を管理する方法
- 作ったスキルマップを形骸化させない運用方法
そもそも、歯科医院のスキルマップとは?
スキルマップとは、 スタッフに必要な業務・能力と、その習得状況を一覧にしたもの です。
例えば歯科助手であれば、次のような業務があります。
- 診療台の準備
- 患者さんの誘導
- 基本セットの準備
- バキューム
- 器具の受け渡し
- 洗浄・滅菌
- 電話対応
- 会計
- 予約対応
ただし、これらを単に一覧にしただけでは、 本当の意味でのスキルマップにはなりません。
なぜ、新人教育にスキルマップが必要なのか
スタッフ
にこまる院長
新人教育で起きる問題の多くは、 「誰が悪い」という話ではありません。
先輩スタッフそれぞれが、 自分の経験や感覚で判断しているため、 評価にばらつきが出ているのです。
スキルマップを作る目的は、 スタッフを細かく採点することではありません。
「ここまでできたら次へ進もう」という共通の基準を作ること です。
ステップ1|新人が行う「仕事」を書き出す
まずは「一日の仕事」から考える
最初から完璧なスキルマップを作ろうとしないでください。
まず、新人スタッフが日常的に行う仕事を書き出します。
例えば歯科助手なら、 「診療前・診療中・診療後」の3つに分けると 洗い出しやすくなります。
診療前
- 診療台の準備
- 基本セットの準備
- カルテ・予約内容の確認
- 必要な材料や器具の準備
診療中
- 患者さんの誘導
- エプロン装着
- バキューム
- 器具の受け渡し
- 材料の準備
- 診療内容に応じたアシスト
診療後
- 器具の回収
- 洗浄
- 滅菌
- 診療台の清掃
- 次の患者さんの準備
斎藤さん
ステップ2|「どこまでできれば合格か」を決める
ここが、スキルマップ作成で最も重要なステップです。
例えば、スキル欄に単に 「バキューム」 とだけ書いてあったとします。
これでは、何をもって「できる」とするのか分かりません。
「バキュームができる」
「患者さんに苦痛を与えず、 術者の視野を妨げない位置で バキューム操作ができる」
電話対応でも同じです。
「電話対応ができる」
「医院名と自分の名前を名乗り、 患者氏名・要件を確認し、 必要に応じて担当者へ正確に引き継げる」
スタッフ
「できる」という言葉を、誰が見ても同じ意味にすること にあります。
ステップ3|習熟度を4段階にする
次に、一つひとつのスキルについて、 習熟度を設定します。
おすすめは、細かくしすぎないことです。 歯科医院の新人教育なら、 まずは次の4段階で十分です。
にこまる院長
斎藤さん
ステップ4|最初は20〜30項目に絞る
スキルマップを作るときによくある失敗が、 最初から完璧なものを作ろうとすることです。
100項目、200項目と作ってしまうと、 作成する側も大変ですし、 新人スタッフも教育担当者も見る気がなくなります。
そして数か月後には、誰も更新しなくなります。
例えば、3か月ならこのように分けます
| 時期 | 主な育成テーマ | 例 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 基本動作・安全 | 診療準備、片付け、患者誘導、洗浄・滅菌 |
| 2か月目 | 基本的な診療補助 | バキューム、器具の受け渡し、材料準備 |
| 3か月目 | 一人で任せる業務を増やす | 電話対応、予約対応、基本的な診療アシスト |
歯科助手のスキルマップ例
例えば、最初のスキルマップは このくらいシンプルでも構いません。
| スキル | 合格基準の例 | 現在 |
|---|---|---|
| 患者誘導 | 患者名を確認し、 安全に診療台まで案内できる | Lv.3 |
| 基本セット準備 | 診療開始前に必要器具を 不足なく準備できる | Lv.3 |
| 診療台準備 | 感染対策を含め、 医院の手順通りに準備できる | Lv.3 |
| バキューム | 患者さんに苦痛を与えず、 術者の視野を妨げず操作できる | Lv.2 |
| 器具の受け渡し | 術者の動きを見ながら 安全に受け渡しできる | Lv.2 |
| 器具回収 | 使用済み器具を院内ルールに従って 安全に回収できる | Lv.3 |
| 洗浄・滅菌 | 感染対策手順を守って 洗浄・包装・滅菌工程を実施できる | Lv.3 |
| 電話対応 | 医院名・氏名を名乗り、 相手の氏名・要件を確認できる | Lv.2 |
| 予約対応 | 医院ルールに沿って 予約・変更・キャンセルを処理できる | Lv.2 |
| 会計 | 内容を確認し、 間違いなく会計処理を行える | Lv.2 |
| 診療後清掃 | 感染対策基準に沿って 診療台周辺を清掃できる | Lv.3 |
| 後輩への説明 | 基本業務について、 手順と理由を説明できる | Lv.1 |
スタッフ
斎藤さん
ステップ5|月1回、10分だけ振り返る
スキルマップは、作っただけでは意味がありません。
ただし、毎週長い面談を行う必要もありません。
おすすめは、 月1回・10分程度の短い確認 です。
「バキュームが一人でできるようになった」など、 成長した点を確認します。
本人が「まだ自信がない」と感じている業務を聞きます。
次回までの育成テーマを明確にします。
スキルマップを「人事評価表」にしない
ここは、院長先生に特に注意していただきたい点です。
スキルマップを、 「できていないスタッフを見つける表」 にしてはいけません。
できていないことを指摘され、 給与や評価を下げられると思えば、 スタッフは当然、 「できません」「分かりません」と言いにくくなります。
本来は逆です。
にこまる院長
斎藤さん
スキルマップが続かなくなる3つの原因
1|項目が多すぎる
最初から完璧なスキル表を作ると、 更新そのものが仕事になってしまいます。
まずは20〜30項目程度から始め、 実際に使いながら追加してください。
2|「できる」の基準が曖昧
「電話対応」「診療補助」だけでは、 評価者によって判断が変わります。
できるだけ 実際の行動がイメージできる言葉 にしてください。
3|作った後に見る機会がない
Excelを作って共有フォルダに入れただけでは、 ほぼ確実に使われなくなります。
「毎月○日に10分確認する」など、 確認する場までセットで設計 してください。
まずは「1職種・20項目」から始めてください
スキルマップは、 立派なExcelファイルを作ることが目的ではありません。
最初は紙1枚でも構いません。
- 何を 覚えればいいのか
- どこまで できればいいのか
- 次に何を 練習すればいいのか
この3つが共有できれば、 新人教育は少しずつ 「先輩の経験と勘」から 「医院の仕組み」へ変わっていきます。
まとめ|新人教育を「感覚」から「仕組み」へ
歯科医院のスキルマップは、 難しく考える必要はありません。
特に大切なのは、 「できる・できない」を評価することではなく、 次に何を教えればよいかを見えるようにすること です。
新人教育がうまくいかないとき、 必ずしも新人や教育担当者に問題があるとは限りません。
「何を、どの順番で、どこまでできればよいのか」が 医院の中で共有されていないだけかもしれません。
斎藤さん
次回は、今回作ったスキルマップを、 「1か月目・2か月目・3か月目」の育成計画へ 落とし込む方法を解説します。
院長ひとりで
人材育成を抱えないために。
ライドオン人材育成研究会・歯科医院研究部会では、 新人教育、スキルマップ、面談、リーダー育成など、 歯科医院の「人が育つ仕組み」を 実際の現場で研究しています。
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